Monologue
3.プロジェクト管理(2019/1/16)
1)組織としての管理
プロジェクトを管理する強固な組織体制としては、PDS(Plan・Do・See)の体制が一番強固であろうと思います。最も知られているPDSの管理体制としては、国の政治の枠組みとして知られる三権分立です。国家権力を立法・司法・行政の三権に分け、それぞれ独立した機関に委ねることで、相互に牽制しあうことで権力の乱用を防止し、自由を保障しようとするものです。ロック・モンテスキューらによって唱えられました。
n個の組織がお互いに牽制しあう場合の組合せは、nC2で示されます。2つの組織であれば1、3つの組織では3、4つの組織では6、5つの組織では10となり、組織数が増えれば、組織間のチェックの組合せは多くなってしまいます。
つまり、3つの組織によってお互いに牽制しあうという仕組みは非常に効率が良いと言えます。計画を立てる組織、実行する組織、評価する組織が独立していて、お互いを牽制しあうとういう管理体制が最も効率的であり、ロバストな体制であろうと思います。
2)プロジェクトの内部管理
プロジェクトを運営している組織として、その運営状況を把握することは重要であり、運営が改善されていく永続的な仕組みが求められます。その最も知られている管理方式がPDCA(Plan・Do・Check・Action)と言われる方式です。PDCAサイクルと呼ばれ、生産技術における品質管理などの継続的改善手法として発展してきました。
計画・実行・評価・改善の4つの段階を継続的につなげていくことで、PDCAのサイクルが螺旋を描くようにレベルをアップしていくということから、業務を継続的に改善するということで、スパイラルアップさせていく仕組みだと考えられています。また、この考え方は、生産管理に留まらず、あらゆる分野で広く活用されています。
PDCAについては、多くの書物で説明されていますし、PDCAを改良した考え方も色々と発表されていますので、ここでは説明しません。
3)プロジェクトの外部管理
プロジェクトの管理においては、プロジェクトのプロセスについては伺い知れないということがよくあります。プロセスに関する評価が可能な場合は、プロジェクトの内部管理と同様にPDCAで管理することも可能ですが、プロセスが分からない場合は、PDCAで評価することが難しくなります。
プロジェクトのプロセスが開示できないという場合もありますし、プロセスを開示されても理解できないという場合もあります。例えば、政府の宇宙開発プロジェクトのプロセスを開示されても市井の人には評価のしようがありません。
政府は、何でもかんでもPDCAで評価することを求めたり、何でもかんでも見える化すれば良いと考えているように思えますが、アカウンタビリティの責任放棄とも思えます。
大企業では、膨大な数のプロジェクトが動いていますが、大企業のトップが全てのプロジェクトの内容を理解して判断している訳ではありません。プロジェクトの内部ではPDCAで管理されていたとしても、企業のトップが全てのPDCAによる管理内容を評価することは不可能です。効率的な管理方法が無ければ、企業を運営していくことはできません。
国や自治体が行っている多くの事業も同様であり、国民・市民が全ての事業を中身を理解して評価することは不可能です。そこで求められるのが、プロセスを無視してプロジェクトを評価する仕組みです。
大規模システム開発において、全ての仕組みを理解して、システム設計することは至難です。多くの場合、ブラックボックスとなる部分が存在します。もちろん、ブラックボックスの部分を理解してる人も居なければシステムは完成しませんが、全体の設計者は、全てをホワイトボックス化することを求めません。ファイヤーウォールの部分は、セキュリティ担当が把握していれば良いと考えます。銀行の預金管理システムの開発において、ATMの機械の仕組みを把握していなくても預金管理システムの設計は可能なのです。
システムの設計の基本は、IPO(Input・Process・Output)です。どういう入力があって、どういうプロセスがあれば、どういう出力が出てくるかを設計します。ATMの機械は、システム設計者にとってはブラックボックスですが、どういう入力をすれば、どういう出力があるかは理解できます。つまり、プロセスが分からなくても入力と出力の関係が分かれば設計はできるということです。
企業のトップにとって、プロジェクトのプロセスが理解できなくても、どういう資源を投入すれば、どういうリターンが得られるかを理解するのは難しくありません。もちろん、単に儲かれば良いという訳ではありませんし、違法な商売で儲けることは許されません。プロジェクトの目標管理をする必要があります。
4)亀理論
本ブログでは、プロジェクトの外部管理手法として、本ブログの運営会社が考案した亀理論(下図)を推奨しています。亀は甲羅で覆われていて外部からの攻撃を防いでいますが、活動している時は甲羅から頭等が出ています。つまり、プロセスが甲羅で覆われていて評価できない場合に、甲羅から出ている頭等で評価しようというものです。
データ分析は、プロジェクトの外部管理と似ています。プロセスを無視して、外に出てきたデータだけから判断しようとするものだからです。つまり、プロジェクトの外部管理手法は、データ分析に有用な示唆を提供してくれるはずです。
亀理論は、大きく3つの視点で管理します。「現状と目標」、「投下資源と結果」、「意図と成果」の3つです。Present、Target、Input、Output、Intension、Outcomeを甲羅から出ている頭、4つの足、尻尾に当てはめて、Processは甲羅に覆われているというイメージになっています。
「現状と目標」の分析は、プロジェクトを立ち上げる最初に考えるべきもので、目標は、目的を達成する手段として明確になっている必要があります。目標は段階的になっている場合もありますし、プロジェクトの運営途中で見直しになる場合もありますが、以上の6つを同時に見直す必要があります。
「投下資源と結果」は、システム設計でいうところのIPOのProcessを除いた、InputとOutputに相当します。例えば、複数年計画であれば、全体のInputとOutputだけではなく、年毎のInputとOutputを明確にする必要があります。不明な部分があったとしても、蓋然性の高い事象で計画しておく必要がありますし、複数のパターンを用意しなければならない場合もあります。
「意図と成果」は、プロジェクト管理において最も重要な部分であり、プロジェクトの成功はここに掛かっているとも言えます。成果とは、単なる結果ではなく、プロジェクトが成功したと言えるか否かを判断できるものです。データ分析では、成果指標の様に言われます。単にプロジェクトが運営されているということではなく、プロジェクトの目標が達成できているか否かを示すもので、プロジェクトの問題を洗い出すためにも、複数の成果指標で多面的に管理できることが求められます。
プロジェクトを立ち上げる際に最も重要なのが「意図」です。しかし、これが明らかにされているプロジェクトは少ないと言えます。残念ながら、公的な事業プロジェクトで明示されているのを見ることはありません。意図は、「成功する意図」と「失敗しない意図」の2種類があります。
成功する意図とは、プロジェクトが成功すると思える理由です。現状と目標の間には壁がありますが、それを乗り越えられるという理由が必要です。また、商売においては、競合がいるかもしれませんが、それらに勝てるという競争優位性を示す必要があります。成功する意図が複数あれば、心強いと思えるのではないでしょうか。
失敗しない意図とは、プロジェクトが失敗しないと思える理由です。例えば、公的なプロジェクトでは、成功したとは思えない事例が山の様にあります。企業においても失敗が無かったということは稀でしょうし、少なくとも業界内等において失敗事例に事欠くことは無いと思います。それらが失敗したのには、何らかの理由があったはずです。何らかの類似と思えるプロジェクトと比較して、失敗しないと思える理由を整理しておくことは重要なことです。
「現状と目標」、「投下資源と結果」、「意図と成果」は、それぞれ対応していて、それぞれの組合せで評価することができます。意図と成果も同様に組合せで考えることが可能です。成功する意図や失敗しない意図で考えられた事柄をチェックできるように考えておくことは、プロジェクトを成功に導く一番の指標であり、成果の検証にもなると思われます。